確定申告にお困りの飲食業・クリエイターの方へ

個人事業主と法人の違い
個人事業主といっても様々な方がいらっしゃいます。飲食店や美容室を経営していたり、イラストレーターやデザイナー、プログラマーなどクリエイターとしてフリーランスで活躍している方もいます。そして、職人的に仕事を楽しんでいきたい方、将来は積極的に雇用をしていきたい方…など、理想のワークスタイルや将来の夢も違います。
そのため、「個人事業主でいくか、法人化をするか」を判断する場合、同じ条件でもメリットと捉えるかデメリットと捉えるかは人によって違うことが多いのです。ですので、単純に500万円以上の利益だから法人…などと考える必要はありません。
個人の収入と資金繰りの面において、個人事業主派と法人派の考え方をお伝えします。どちらの考え方がしっくり来るかを読んで、判断材料にしてみてください。
個人の収入
個人事業主派
個人の場合は、売り上げから経費や社会保険などを抜いた利益が自分の収入になります。しかし、法人の場合、経営者は、年に一度、役員報酬を定めたら、その金額しか収入になりません。そのため、「今月は思ったより利益があったから旅行にいくぞ!」「前から欲しかった時計を買おう」などと売り上げの高かった月の利益を私用で使うことができないのです。自分の稼いだお金が単純に自分のものにならない歯痒さを感じてしまう場合は、個人事業主の方がしっくりくるかもしれません。
法人派
役員報酬のおかげで守られる部分もあります。法人の場合は、所得税、住民税、社会保険料などを控除した決まった収入が手元に入りますが、個人事業主の場合は、納税を不定期で行うので、資金繰り(資金管理)が難しくなります。
個人事業主で思ったより多くの利益を上げた次の年は、その年の売り上げが少なくても、所得税の予定納税(7月、11月)、住民税、個人事業税、国民健康保険料などが高くなります。役員報酬で決まった金額をもらっている場合は、個人で支払う税金や社会保険料は想定した金額で済みますので、利益が多かった次の年の支払いに苦労することはありません。
また、給与所得控除という控除を受けることができるので、個人事業主よりも法人化した方が個人が支払う税金は少なくすむ場合が多いです。
資金繰り
個人事業主派
法人化したら、個人の支払う税金は少なくてすむとしても、法人として支払う法人税等があります。それは、どれだけ売り上げが少なくても年間最低7万円(資本金1千万円以下、従業員50人以下の場合の法人住民税の均等割)発生します。また、毎月、役員報酬や従業員の給料に応じた社会保険料の会社負担があります。法人は、何もしなくても最低限かかる金額が個人事業主より高くなってしまう傾向にあります。そのため、支払いに困らないように、現金を用意しておくため、借り入れをするなどの資金繰りが必要になる可能性が高くなります。今までマイペースに仕事を行なっていた個人事業主が法人化すると「まるで、税金や社会保険のために仕事をしているみたいだ」と後悔する場合もあります。マイペースに仕事を楽しみたい場合は、法人よりも個人事業主を選択した方が良いでしょう。
法人派
法人は個人事業主にくらべて好条件で融資を受けることができる可能性がありますので、借り入れや融資なども積極的に利用しながら事業を継続させることができます。事前の設備投資が必要な仕事にチャレンジしたり、チームを組んで大きな仕事を受けたり、事業拡大を計画する場合などは、法人化した方が圧倒的に有利です。
POINT
考え方によって、法人化をメリットと捉えるかデメリットと捉えるかは違います。
利益が500万円以上の場合は法人化をした方がお得?
「利益が500万円以上の場合は法人化をした方がお得」という話は、個人と法人の税率の違いにより法人の方が税率が低くなるケースがあるために言われているものです。その分岐点がだいたい「事業所得(利益)が500万円以上」だと書いてある記事などもあります。しかし、所得控除は人によって違いますし、税率も会社の規模や利益の金額で変わります。そのため、モデルで書かれているケースが自分に当てはまらない可能性が高いです。
また、会社に係る税率は、法人税の他に、地方法人税、法人事業税、法人住民税までを含めた実効税率で考える必要がありますので、所得税との単純な税率比較は難しいはずです。事業所得が多い場合、法人化した方が税率が低くなる可能性があるとだけ覚えていただき、具体的な数字は税理士にご相談ください。
